メゾソプラノ中森千春~うた日記~

ドイツ音楽と日本抒情歌が大好きな中森千春のつれづれ日記♪

レッスンについて②(使用教材:教則本)

体験レッスンについての記事で触れた「コールユーブンゲン」「コンコーネ50番」ですが、実際に入会して通っている生徒さんによっては、ほかの教材も並行して使うことがあります。

その一部、使用頻度の高いものを中心に、いくつか教則本を紹介します。

 

1.全訳コールユーブンゲン

これは、ほとんどの生徒さんが使っています。

もとは、ミュンヘン音楽学校で合唱教則本として使われていたものですが、日本ではその第1巻(単旋律を扱う部分)がよく使われています。音楽系の高校や音大・教育大の入試課題でもお馴染みの教材です。

原題は「Chorübungen der Münchener Musikschule」。直訳すると、「ミュンヘン音楽学校の合唱練習書」といったところでしょうか。アンサンブルをする上で必要となる音程・リズム・拍節・調性などを無理なく習得できるように、二度から八度、ハ長調(Cdur)から調号のある調性へ、単純なリズムから複雑なリズムへ、短い曲から長い曲へ、徐々に難易度が上がっていきます。

主として音程感覚を身に付けるために使用していますが、新曲視唱への導入として、また声の”ゆれ”を矯正する目的として(機械的に歌うことで軽減できる場合があります)、生徒さんの課題に合わせた使い方を模索しています。

原書の初版は1876年。国内シェア第一位と思われるほどよく見かける大阪開成館の楽譜は、大正14年が初版。歌曲集《沙羅》の作曲者として知られている信時潔氏による翻訳です。今ではほかの訳や版も何種類か出版されていますが、基本的に「大阪開成館」の版を使っています。

 

2.コンコーネ50番(中声用)

これも、ほとんどの生徒さんが使っています。

ピアノ伴奏に合わせて歌うことを前提に作られているので、単旋律を歌いながら和声感覚を身に付けることができます。

中高生でソルフェージュレッスンを兼ねている場合は、楽典の学習として調性や楽語などに注目した指導も丁寧に行っています。音域を広げたい、普段は合唱を楽しんでいるけどソロでのびのび歌いたい、等の生徒さんの場合は、母音唱を数種類組み合わせて1曲をくり返し何度も歌っていただきます。

譜読みが苦手な中高生で、ある日突然新曲をスラスラ歌えてしまった生徒さんがいました。聞くと、動画サイトで予習してきたとのこと。時代を感じました(笑)

もちろん、読譜力を鍛えるのであれば、一人でピアノに向かいながらゆっくり譜読みをするのが大切です。その生徒さんの場合は、「コールユーブンゲン」やほかの教材で新曲視唱のトレーニングをしていたこともあり、「コンコーネ」では楽譜から導いた歌唱表現の可能性を広げていくことを課題とし、動画サイトを利用することは止めませんでした。これも、指導者それぞれの方針があるかと思います...。

声種にあわせて「高声用」「中声用」「低声用」とありますが、ほとんどの生徒さんが「中声用」を使用しています。声種は体験レッスンのときに判断しますが、判断しかねる場合は「中声用」を使いながら曲に応じて移調するなど対応しています。

 

3.トスティ50番(中声用) (声楽ライブラリー)

これは、「コンコーネ50番」を終わらせた生徒さんが使うほか、単発レッスンや出張レッスンなど、長期的なレッスン計画が立てにくい生徒さんが使ったりもします。

トスティといえば、イタリア歌曲の中で不動の人気作曲家ですね。私も学生時代にたくさん歌いました。美しいメロディが、歌っていても聴いていても、そして伴奏していても心地よい作品ばかりです。

そんなトスティ先生が作った教則本。「コンコーネ50番」と同じく、全部で50曲収録されています。No.1は二度音程、No.2は三度音程、と徐々に使用音程が広がっていくのは、初学者に親切だなぁと思います。また、歌曲作品の音楽的魅力は健在のため、なんてことないシンプルなメロディーにも複雑で美しい和音が付いていたり、レガート唱の助けになるような伴奏形が展開されていたり、とにかく歌っていて気持ちがいい。

「コンコーネ50番」のあとは、より技巧的で難易度の高い「コンコーネ25番」へ、という進み方もありますが、「トスティ50番」はナンバー抜粋でよく使っています。

 

4.子供のためのソルフェージュ(1a)

これは、ソルフェージュに特化したレッスンでよく使います。

宝塚受験専門のスクールでよく使われている教材なので、都心のスクールと並行して通っている生徒さんには、フォローアップを兼ねて使っています。

まず、曲が短い。そして、楽譜のサイズが大きい。読み間違いの心配がないというのは、乱視持ちの私にもありがたいレイアウトです(笑)

目次には、各項で扱われる拍子やリズムの一覧もあるので、生徒さんのレベルに応じた課題を探しやすいのもありがたいですね。

 

5.八小節のソルフェージュ 改訂版

受験課題に新曲視唱がある生徒さんが使います。

教師用と生徒用に2冊所有し、ソルフェージュレッスンの時に教室内で貸し出しています。

「子供のためのソルフェージュ」と比べると楽譜のサイズが小さいので、乱視持ちの私には少し厳しい教材です(笑)

視唱用の教材として使うことがありますが、同じリズムパターンの課題や同じ調性の課題が何曲も並んでいるので、生徒さんの苦手克服に特化したトレーニングがしやすいと思います。また、聴音課題にも一部利用しています。

 

6.ジーバー : 36の八小節のヴォカリーズ/Op.93/メゾ・ソプラノ用/シャーマー社

まだ生徒さんには直接使っていませんが、今後使えたらいいなと思って保管している楽譜。

1曲が8小節というシンプルさ。そして、曲調の多様さ。

収録の36曲は、様々な調性・拍子・曲調が不規則に並んでいます。後半の方は、歌唱難易度も上がっているような気もします(まだしっかり分析していません...)。

また、有声子音と無声子音が交互に並んだ無機的歌詞がついているので、歌詞を伴う声楽曲をレガートで歌うトレーニングにぴったり。

なにより面白いと思ったのは、声種に応じて6種類(!)の楽譜が出版されていること。研究用(自分用)に「メゾ・ソプラノ用」をまず先に購入しましたが、いずれは「ソプラノ用」「メゾ・ソプラノ用」「アルト用」「テノール用」「バリトン用」「バス用」の全種を揃えて並べてみたいです。

現在は、女声3種を揃えていますが、並べてびっくりしました。それぞれ、曲が違うのです。ほかの教則本は移調しているだけがほとんどのところ、全て曲が違うのには驚きました。きっと、男声3種もそれぞれ違うのでしょうね。

生徒さんの声種や悩みに応じて選曲しやすいのは、レッスンにおける最大の利点です。

 

シリーズ記事「レッスンについて」

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