最近、動画サイトを頼りに譜読みをしてくる生徒さんが増えてきました。
レコード、カセットテープ、CD、そして今や○ーチューブ。...時代ですね(笑)
私自身、新しい曲を歌うとき、またいろいろな表現方法を探りたいときに、動画サイトを活用しています。音そのものを体感する上ではコンサート会場での生演奏には敵いませんが、参考音源としては利用価値がとても高いと感じています。
特に、CDが絶版などですぐ入手できないときや、持っていても出先でプレイヤーがなくて再生できないときなど、スマホでも視聴できるのは便利ですね。コンサートの選曲会議などでも助かっています。
あくまでも「参考音源」として扱う場合は便利なツールですが、それを譜読みの助けにしてしまうと、スキルアップの妨げになることもあります。
最近の生徒さんの様子から、動画サイトの活用方法について私自身いろいろ考えさせられました。
生徒Aさん(高校生)はそれなりに効果があるようで、「条件付き」で奨励しています。
もともと耳がいいのか(ピアノ学習歴あり)、旋律をピアノでなぞれば音を外すことなく歌えるし、新曲も次のレッスン時にはすんなり歌えてしまう生徒さん。ただし、新曲視唱のレッスンはなかなかレベルアップできず、ソルフェージュ用の教則本の見直しを検討しようと思っていました。
その教則本選定の参考として、新曲を家でどのように練習しているのか尋ねたところ、返ってきた答えが「○ーチューブで聴きました」。もしかして...と確認したら、これまでの曲も動画サイトを見ながら(聴きながら)練習した曲はほぼ完ぺきに歌えていて、自力で練習した曲はなかなかスムーズに歌えていませんでした。
それじゃあ、新曲視唱が苦手なはずです。音源に頼りきってしまうと、耳からインプットすることで、楽譜を読む(音符そのものを見る)ことに意識が向かなくなってしまいます。
そこで、「条件付き」の奨励。
教則本によって(曲によって)、動画サイトを参考に練習する曲と自力で頑張る曲とに振り分けて、それぞれレッスンの目的をはっきりさせました。
動画サイトを参考にする曲は、とにかく譜読みを早く済ませてしまい、歌唱力(技術・表現)を身に付けることに特化。自力で頑張る曲は、レッスン中に譜読みのサポートをしつつ、音符の形から旋律の特徴を捉える力を身に付けることに特化。
このようにレッスン曲を分けたことで、現在進行形で徐々に変化が表れています。レッスンの目的(自身の課題)をはっきりさせることで効果が上がった、とも言えますが、Aさんは動画サイトを参考音源としてうまく活用できていると思います。
もう一人ご紹介。
生徒Bさん(一般30代)は、Aさんと同じく動画サイトを参考に譜読みをしてくるタイプでした。新曲の譜読みは次のレッスン時に完了しているものの、音程感覚が不安定で、ピッチの微調整に難儀している様子。
調性や音形によって得手不得手があるかもしれないと思い、いくつかの曲を歌いながら原因(改善点)を探っていました。また、口の形や表情筋の動かし方、半音・全音の捉え方など、レッスンの中でいろいろなアプローチを試みましたが、なかなかこれといった解決策が見つかりませんでした。
そんなとき、ふとしたきっかけで家に鍵盤楽器がない(!)ことが判明しました。ピアノがないことは教室入会時にうかがっていましたが、卓上キーボード(合唱の音取りでよく使われるサイズ)も持っていなかったそう。しっかり確認していなかった私にも責任がありますが、今までどうやって練習していたのでしょう。
Bさんには、私が持っているキーボードを紹介しつつ、キーボードと動画サイトを併用した練習方法を提案しました。鍵盤を見ながら歌うことで、音程(音高差)が目に見えて分かります。参考音源を聴きながらキーボードで旋律を弾くだけでも、その音程感覚は十分に養えるはず。
このBさんは、さっそくキーボードを買って練習を始めたそう。この先の変化が待ち遠しいです。